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ウェアの製造過程で起こる
品質事故とそのメカニズム
-紡績編-

2019.02.22(最終更新:2020.02.27)
Edited by キャブ株式会社

Tシャツなどのウェアを製造している過程では、さまざまな品質事故が起こる可能性があります。
品質事故が発生すると、いわゆる「不良品」「B品」といったものができあがってしまい、商品として販売することができません。 もちろん、私たちキャブ株式会社でも品質事故が起こらないよう細心の注意を払い、厳しく品質管理を行っています。
それら品質事故の原因や当社が行っている対策を、Tシャツの製造工程ごとに4回に分けてご紹介します。

紡績(原料の繊維から糸の状態にするまで)の工程で生じうる品質事故について説明していきます。

「–原料(綿花)編-」でも述べたように、糸の表面に小さな繊維が出ている状態を毛羽と言います。そして、この毛羽が摩擦によって球状のかたまりになったものを毛玉=ピリングと呼びます。
基本的に綿などの短繊維は毛羽が生じるため、毛玉が起きやすい傾向にあります。
この毛玉を目立ちにくくするために、生地を仕上げる際、「抗ピリング剤」によるアンチピリング加工を施すことも有効です。

ムラ糸は紡績時にも発生します。
紡績時には「梳綿(そめん)」と呼ばれる重要な工程があります。
もつれあった繊維を解きほぐして一本一本の繊維に分離する工程で、この梳綿が不十分で繊維にムラが発生した糸が使われた場合、生地にムラ(ふし)が出てしまう原因になります。
また、「練条(れんじょう)」と呼ばれる糸の太さを均一にする工程で十分に平均度を上げなければ、糸になったときに太い糸・細い糸といったムラ糸になってしまうことがあります。

また、「リングスパン糸」(しめ縄をつくる原理で紡績され、糸の表面は滑らかで強度のある糸。当社の綿製品のほとんどがこれを使用)と呼ばれる糸で編み立てられた生地の場合、糸の撚りが不十分で不均一だとムラになってしまうことがあります。

製品パーツごとの縫製に使用される縫製糸が糸切れを起こすことがあります。
糸切れの原因にはいくつか考えられますが、紡績の工程が原因の一つとされるのは「精紡(せいぼう)」と呼ばれる工程の不十分さです。
「精紡」とは粗糸(そし)を引き伸ばし、撚りを加えて強度を持たせる工程のことで、この撚りが甘く強度が弱い糸を使用すると、縫製糸の糸切れを起こすことがあります。
(Tシャツの製造工程に関する詳細は「Tシャツの製造工程」をご覧ください)

斜行とは、一方方向に生地がねじれる現象を指します。
たとえばTシャツで斜行が発生すると、横割りの場合、脇線がフロントにきてしまい、いわゆる「外観不良」という不良につながります。(横割りについては「Tシャツの横割りと丸胴。どう違う!?」

斜行の三大要素は「天然繊維」「単糸(たんし)」「天竺生地(てんじくきじ)」と言われています。

「天然繊維」とは、綿や麻、毛などを指し、当社の製品ではTシャツやスウェット、ポロシャツなどに主に綿を使用しています。
「単糸」とは紡績したままの1本の糸のことで、一方方向(右撚り/左撚り)に撚って糸を形成しています。

「天竺生地」とは一般的にTシャツなどに使用されます。これは丸編み(筒状に生地を編む)で編まれることがほとんどです。
これら三大要素により、「撚糸の元に戻ろうとする力」と「丸編み機によるらせん状に編まれた生地のゆがみ」が発生し、斜行が顕著に起きてしまうと言われています。
「撚糸の元に戻ろうとする力」によって反発力(トルクと呼ぶ)が起きて編み糸がよじれ、縦方向に斜行が発生してしまうことがあります。

また、丸編み機で編まれたらせん状の生地は、染色後、タテ目に沿って開反(かいたん)をします。
その開反の時点で生地は斜行しているため、通常は斜行を矯正します。
しかし当社では、その矯正を行わず、斜行をさせたままで次の工程に進みます。
なぜなら、開反後の斜行修正により、生地に元の状態へもどろうとする力が働いてしまい、製品の状態で洗濯をしたときに、斜行が再発してしまうからです。

最初から生地に斜行を残した状態にすることで、その後の洗濯や乾燥などによるさらなる斜行の発生を抑えることができる、ということです。

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1930年創業。United Athle(ユナイテッドアスレ)を企画・製造するアパレルメーカー。
創業以来モノづくりに従事し培ってきた知識と経験で、全国1万社以上のお客様のビジネスの
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