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糸にはどんな種類があるの?
衣類などの生地に使われている糸の種類や太さの表記、それらの風合いへの影響について

2017.12.05(最終更新:2020.12.02)
Edited by キャブ株式会社

編み物でも織物でも、生地を形づくるのは「糸」です。 衣類などに欠かせない糸ですが、そのグレードや太さ、製造工程などによって風合い・着心地がまったく異なった仕上がりになります。

今回は、どのような糸の種類・特徴・表記があるかについて「綿糸」「ポリエステル糸」を中心にご紹介します。

糸を製造方法で大別すると、「スパン糸(紡績糸)」と「フィラメント糸」の2種類になります。

・スパン糸(紡績糸)
綿花などから採れた糸の元となる繊維のうち、繊維長の短い原料(短繊維)に撚りをかけることで作る糸です。
撚りをかけることで繊維同士が絡み合い、引っ張っても繊維が抜けず「糸」としての形を保つことができます。 撚りの強度によって特性や品質を変えることができる糸で、原料は天然繊維の綿や麻などがその代表にあたります。
繊維長が短いため、多少の毛羽立ち感があり柔らかな風合いとなります。

・フィラメント糸
繊維長の長い原料(長繊維)を束ね、撚り合わせることで作る糸です。
スパン糸とは異なり、繊維一つひとつが長いため、脱落がなく強度が強いのが特徴で、表面は毛羽がなく平滑で光沢感があります。 ポリエステルなどの化学繊維や、天然繊維では絹が原料となります。

Tシャツやスウェットに使用されることが多い綿糸ですが、一言で糸と言っても「グレード」「太さ」「製造方法」によって、風合いや着心地を大きく左右します。
(基本的な綿糸の製造工程は「Tシャツの製造工程 1.綿花から糸を製造する」をご覧ください)

綿糸のグレードには大きく分けて「カード糸」「コーマ糸」の2つの種類があり、使用するグレードによって品質や価格が異なります。

・カード糸
最もスタンダードな糸です。糸を作る過程で、余分な繊維を取り除く「カーディング」という工程を行い、一般的に5%程度の短い繊維を取り除きます。 光沢はあまりなく、毛羽(けば)が多めなのが特徴ですが、安価に作ることができるため、Tシャツの価格自体も安く抑えることが可能です。
サラッとしていて固めな風合いで、ラフな味わいを楽しめるため、Tシャツ愛好家の中にはこの「シャリ感」を好み、あえてカード糸にこだわる方も少なくありません。

・コーマ糸
最も上質な糸です。糸を作る過程で「コーミング」(くしで髪をすくように針で繊維をくしけずって平行に伸ばすこと)を行い、約20%の不良部分を取り除きます。 カード糸と比べると製造工程も多く、ランクが上に位置づけされます。
短い繊維をさらに取り除くことで毛羽立ちが減り、ツヤのある、やわらかな高品質な生地に仕上がります。また、洗濯をしても生地表面に毛羽が出にくく、生地表面の美しさが長持ちします。

糸の太さを表す数値で「番手(ばんて)」「デニール」というものがあります。(「デニール」については後述)
番手の種類には「綿番手」「麻番手」「共通式番手」の3種類があり、本記事では「綿番手」のご紹介をします。

番手とは、「一定の重さに対して長さがどのくらいあるか」を表した数値で、スパン糸に多く採用される表記です。
具体的には1ポンドあたりの長さで決まり、数値が大きければ大きいほど、糸が細くて軽量になります。
例えば、「1番手」というと、「重さが1ポンド(453.6g)で長さが840ヤード(768.1m)ある糸」のことを指します。

糸番手が大きくなるほど糸の太さが細くなり、「高級番手」と呼ばれ、柔らかく優しい風合いで肌触りのいい生地に仕上がります。

反対に、糸番手の小さい、いわゆる「太番手」を使用すると、分厚くてしっかりとした生地ができあがります。

糸をつむぐ工程(紡績工程)の手法の違いにより、大別して2種類の糸を作ることができます。
ここではその2種類「リングスパン糸」と「オープンエンド糸」の違いについて解説します。

・リングスパン糸
リング紡績機で作られる一般的な糸。
粗糸(そし)と呼ばれる糸を作る前の少し撚りのかかったごく太い糸が高速回転する輪(リング)状になった部分を通過することで、機械的に均一の撚りをかけて糸にする製法によって作り上げられます。
しめ縄をつくる原理で紡績され、糸の表面は滑らかで強度のある糸に仕上がります。

↑(参考)トヨタ産業技術記念館様(YouTubeチャンネル)より

・オープンエンド糸
オープンエンド紡績機で作られる糸。
リングスパン糸がリングの回転によって撚りをかけるのに対して、オープンエンド糸は、高速回転するロータの中央部から外部の巻き取りローラーへ巻き取るときにローターの回転により撚りをかけます。
空気の流れで撚りを加えて糸にするため、糸そのものに適度な空気を含みガザ感・シャリ感があるのが特徴です。

最近では身近な繊維となったポリエステル。衣類だけでなく、丈夫さや速乾性などの特徴からさまざまな日用品に利用されるようになりました。
しかし、実のところその製法や太さなどの表記については知られていません。
ここからは、ポリエステル糸の製造工程や数値表記について解説します。

ポリエステルをはじめとした化学繊維の多くは、その原料となる液体の入った機械にある細い孔から、繊維を圧力により何本も押し出し、凝固させたうえで撚りを合わせながら連続した糸を作ります。(溶解紡績)
その細い孔が多数開いたノズル(口金)から繊維形状に押し出され、延伸した後、巻き取られます。
口金にはさまざまな形の孔が開けられ、この孔の形状により繊維の断面が異なります。 同じポリエステル糸といっても、その断面形状の違いによって風合い・機能が変わってきます。
例えば、通常は丸孔で作られる「通常断面糸」のところ、Y字の口金で作られた「異形断面糸」を生地に使用することで、光沢感があり絹のような柔らかな風合いを出すことができます。

タイツやストッキングの表記としてはお馴染みのこの単位、実は「生地の厚さ」の単位ではなく「糸の太さ」の単位を表しています。
前述のスパン糸に多く採用される「番手」に対して、フィラメント糸の表記に採用されるのがこの「デニール」で、ポリエステル糸やナイロン糸の太さを表します。
9,000mの長さで1gの重さの糸の太さが「1デニール」と定められており、例えば、9,000mの長さで10グラムであれば「10デニール」となります。
このことからお分かりになる通り、番手とは反対に、数値が大きくなればなるほど太い糸になるということが言えます。

あまり聞き馴染みのない言葉ですが、ポリエステル生地の風合いを左右する大事な表記です。
前述の通り、フィラメント糸は長繊維を複数束ね撚り合わせて作りますが、この束ねる繊維の数を「フィラメントカウント」と呼びます。
複数の繊維を撚り合わせて作った1本の糸を「マルチフィラメント」と呼び、魚網やテグス(釣り糸)のような1本の繊維だけで作られたものを「モノフィラメント」と呼びます。 このカウント数が多ければ多いほど、たくさんの繊維を束ねていることを表します。
同じデニール(=糸の太さが同じ)であれば、フィラメントカウントが多い、つまりより細い繊維を束ねていることになるため生地の風合いが柔らかくなります。

以上のように、Tシャツやスウェットなどを形づくる「生地」の品質を左右する「糸」は非常に重要なファクターになります。
もちろん品質だけでなく、価格や風合いといった特徴を決定づけます。
普段、Tシャツなどを着ているときには、よほどの愛好家でない限り「これはカード糸でできているな」とか「これはオープンエンド糸だからシャリ感がある」といったことは意識しないかもしれません。

しかし、どのような糸を採用するかによって値段や着心地、肌ざわりが異なってくるため、作り手である私たちは微妙な糸の違いにもこだわっています。
こうした目には見えないこだわりがあることを感じてもらえると、ウェア選びがさらに楽しくなるかもしれません!

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1930年創業。United Athle(ユナイテッドアスレ)を企画・製造するアパレルメーカー。
創業以来モノづくりに従事し培ってきた知識と経験で、全国1万社以上のお客様のビジネスの
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