Tシャツの生地に使われている糸にはどんな種類があるの?着心地は?

Tシャツの厚みや重みを左右するのが糸。原料である綿花から紡績された糸を編み立てることによって、Tシャツの生地ができあがります。

太い糸を使えば硬めで重たい質感のTシャツを作ることができるけれど、細い糸を使えばやわらかくて軽いTシャツを作ることができるというように、使う糸によって着心地や生地の質感、重さが変わってきます。

今回はTシャツにどの様な糸が使われているのか、糸の種類によってどのように着心地や生地の質感が変わるのかという特徴についてご紹介します。

糸の品質を決める糸番手とは?

まず、糸には「番手(ばんて)」という数値が決められています。一定の重さに対して長さがいくらあるか、具体的には1ポンドあたりの長さで決まり、数値が大きければ大きいほど、糸が細くて軽量になるというのが特徴です。

糸を作るには、付着した不純物(葉っぱやゴミ)を取り除く「混打綿(こんだめん)」ののち、もつれあった繊維を解きほぐして1本1本の繊維にして、表面の不要な繊維を取り除く「カード工程・梳綿(そめん)」、上質な糸を作る場合はさらに不要な繊維を取り除いて糸の表面をきれいにする「コーミング」という工程を経て、糸ができあがる紡績工程に移ります。

糸の太さはカード工程やコーミングで、表面の不要な繊維をどれだけ削るかということが大きく関係しているのです。

番手には大きく分けて「太番手」「中番手」「細番手」という3種類があります。それぞれに使用される綿の繊維長は一般的に太番手が20~27mm、中番手が26~28mm、細番手が28~33mmで、名前のとおり太番手が一番太い糸となります。ちなみに20mm以下の糸は太すぎて繊維として使用できないとされていて、縫い糸などの用途に使われます。

太番手の糸を生地に使うと重くて分厚い生地がしっかりしたTシャツが作れ、細番手の糸を生地に使うと軽くて風通しが良いTシャツが作れるというわけです。

具体的に糸のお話に入る前に、糸にはこうした太さがさまざまあることを念頭に置いていただけるとわかりやすいかと思います。

最もスタンダード。涼感があり硬めの質感:カード糸

Tシャツの生地に使われる糸には大きく分けて「カード糸」、「コーマ糸」、「セミコーマ糸」の3つの種類がありますので、ここからはそれぞれの種類の糸の特徴をご紹介します。

まずはTシャツに最も使われている「カード糸」です。比較的太めの糸で、中番手もしくは太番手の糸となるのが特徴です。

糸をつくる過程で、余分な繊維を取り除く「カーディング」という工程を行っているので、「カード糸」と呼ばれます。カーディングでは一般的には5%ほどの短い繊維を取り除いています。また、1本の糸をそのまま編む「単糸(たんし)」で使われることが多いです。

光沢はあまりなく、毛羽(けば)が多めなのが特徴ですが、安価に作ることができるため、Tシャツの価格自体も安く抑えることが可能です。

コーマ糸で作られる生地よりも、サラッとしていて、硬めです。

このような質感を「シャリ感」と呼ぶこともあります。

ランクとしては後述するコーマ糸のほうが上となりますが、だからといってカード糸の質が悪いわけではありません。

また、カード糸で作られる質感にこだわるTシャツ愛好家も多いです。

高品質。光沢がありやわらかな風合い:コーマ糸

カード糸よりも繊維の均一性をあげるために、表面の不要な繊維をさらに削ぎ落とす「コーミング」という工程を施した糸が「コーマ糸」です。

カード糸でも「カーディング」という工程により5%ほどの繊維が取り除かれることは先程ご説明しましたが、コーマ糸では15~20%ほどの繊維が取り除かれます。

削ぎ落とす繊維の量が多いため、同じ量の綿花を使っていてもカード糸と比べるとコーマ糸の方が出来上がる糸の量が少なく、カード糸を100とすると、コーマ糸は70ほどになります。

ニンジンの皮を丁寧に剥くと、表面はきれいになるけど、食べられるニンジンの量は少なくなるようなイメージです。

カード糸と比べると製造工程も多く、ランクが上に位置づけされます。短い繊維をさらに取り除くことで毛羽立ちが減り、ツヤのある、やわらかな高品質Tシャツに仕上がります。また、洗濯をしても生地表面に毛羽が出にくく、生地表面の美しさが長持ちします。

日本と中国独自の規格、セミコーマ糸

糸が比較的太めで安価、毛羽が多いのでラフな風合いと硬めの質感が特徴の「カード糸」、比較的細い糸で高価、毛羽が少ないので光沢があり、やわらかな風合いが特徴の「コーマ糸」。この2種類が国際的な糸の区分です。

しかし、カード糸とコーマ糸の中間ランクである「セミコーマ糸」というランクが存在します。

このセミコーマ糸という概念は日本と中国にしかなく、他の国の工場では「セミコーマ糸を作って」と言っても通じません。

セミコーマの作り方はいくつかありますが、その内の一つはカーディングという工程を行う方法です。

カード糸やコーマ糸の作り方と同様ですが、その後のコーミング工程で表面の不要な繊維を削ぎ落とす量が、コーマ糸が15~20%ほどの繊維が取り除かれるのに対して、セミコーマ糸は10%ほどの繊維が取り除かれます。

そのため、コーマ糸と比較すると綿花から出来上がる糸の量が増えて比較的安価に作れ、カード糸よりも毛羽や糸ムラが少ない光沢がある糸が作れるのが特徴です。

いわば、カード糸とコーマ糸の良いとこ取りをした糸と言えるでしょう。

また、セミコーマ糸の中でも、コーミング工程で繊維を削る量を調整することで、安価だけど毛羽が少なくて質感が良い「カード糸に近いセミコーマ糸」、「コーマ糸に近いカード糸」というように、微妙な調整を行うことも可能です。

セミコーマ糸という概念があるからこそ、日本や中国で着心地が良くて安価なTシャツが作れると言えます。

糸の品質がTシャツの品質を決める

以上のように、Tシャツの価格や特徴を決めるためには糸の種類が非常に重要です。まとめると、糸の表面の不要な繊維をどれだけ削るかによって、糸の種類が異なります。

価格を抑えた一般的なTシャツを作りたい時は、不要な繊維をあまり取り除かないカード糸、少々値段が高くなっても風合いがよい高品質なTシャツが作りたい時は、不要な繊維を多めに削るコーマ糸、という使い分けができます。

さらに、セミコーマ糸を使うことで、価格と着心地で微妙なバランスを調整することが可能です。

普段、Tシャツを着ている分には「これはカード糸でできている」「このTシャツはセミコーマ糸だ」というように意識することはあまりなく、詳しくないと見た目や着心地だけでカード糸なのか、セミコーマ糸なのかを区別することも難しいです。

しかし、どんな糸を使うかによって値段や着心地が変わるため、Tシャツの作り手は微妙な糸の違いにもこだわっています。ぜひ、Tシャツを着られる際には、こうした目に見えないこだわりがあることも感じていただければ幸いです。




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